A GARAGE FOR LOTUS

愛車LotusExigeと過ごす伊豆山奥の隠居生活

STORY(6) - 主はどっち?

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N社長と知り合ったおかげで、私は覚悟を決めることができた。ここまで来たら、中途半端なものを作るのはやめようと思った。安価だという理由で選びかけたログハウスはやめた。価格は高いが寒さに強い高気密住宅にしようと思った私は、住宅展示場に出向き、名刺をくれたハウスメーカーの営業担当者にこう言った。「ガレージを作ってください。」

ガレージ付きの大邸宅なら数多く造ってきただろう、そんなブランドがガレージだけを注文通りに造ってくれるのだろうか? 断られるかと思ったが、営業と設計の担当者が早速現地を見に行ってくれた。少ない予算にも拘わらず、何回も何回も打ち合せし設計図を引き直してくれた。居間のソファーと寝室のベッドの両方から愛車が眺められるようにしろ、ペラペラの金属シャッターはイヤだ、薪ストーブの台座のレンガはイギリス製がいい、洗面台・キッチンの高さは私の身長に合わせろ、と次から次へ我儘のいい放題の末に完成した設計図は、8m×8m=64屬諒寝阿量麋省がガレージスペース、玄関もなければトイレのドアもない、ダイニングもないという常識はずれの私一人専用の小さな空間となった。 初めは「ガレージを作れ」と言われ訝しがっていた営業と設計の二人も、何回も話し合ってゆくうちに、何故、ガレージ部分を居住スペースと同じ断熱仕様にしなければならないのか、何故、居住スペースにさえ付けない除湿機をガレージに付けなければならないのか、何故、ガレージに居住スペースよりはるかに凝った照明を施さなければならないのか、あきれながらも少しは理解してくれたようだった。そんな彼らが、設計図が完成したときに溜息混じりにこう言った。「下の道路沿いに駐車場を作るだけで、居住スペースは倍になるし、こんな長いアプローチを作るコストでもっと広い建物が建てられるのになぁー。」
やはり、私の夢は彼らにとっては最後まで非常識だったようである。(つづく...)