A GARAGE FOR LOTUS

愛車LotusExigeと過ごす伊豆山奥の隠居生活

STORY(11) - LOTUS EXiGE

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エクシージで伊豆・箱根を走り回れるようにと苦労して作ったガレージであったが、完成してみると、ここを基地にして近郊にドライブに出ることなど全く無かった。横浜からの行き帰りだけである。いや、最近では雪のない時期でさえ電車とバスで行き帰りすることが多い。少しでもここに長く居たいと思うと、どうしても帰りが渋滞の時間に重なってしまうからである。渋滞になる前に帰れるようにと作ったガレージのはずだったのに、いつの間にか本末転倒している。それどころか、今やここに定住することが私の夢になりつつある。週末だけだからいいのだと忠告する友もいる。厳しい自然である。楽ではない。だが、朝霧の中に鹿の姿を探し、雲の流れに天気を測り、名も知らぬ花や蝶の美しさに息をのみ、夏には土を掘り枕木を運んで汗と泥まみれの体で、冬には小鳥に餌をやろうと外に出て芯まで凍えた体で、熱い露天風呂に飛び込む。夜は、愛車を横に侍らせて、薪ストーブの炎を見ながら懐かしいLPレコードを聴き、テンやたぬきの隣人が挨拶に現れるの気長に待つ。そう、ベッドに入る前にもう一度露天風呂から満天の星を見上げるのもよい。こんな充実した時間は都会では見つけられない。ここから東京まで毎日通勤できないものかと本気で考えている。「なに馬鹿なことを考えているんだ。」とは、もはやこのガレージを見た友人たちは言わない。私も、私の性格からしてそうなるような予感がしている。

1台の車が私の生活を変えてくれた。この車が縁で多くの人と知り合え、人生の一大決心もできた。都会に生まれ、都会に育ち、都会でサラリーマンを30年やってきた私が、自然の中で野良仕事を趣味に暮らすかも知れないなど、自分でも想像だにできなかった。それほどこの車が私の人生に与えた影響は大きかった。たかが車に影響される程度の人生と笑われるだろうが、そんな車と私はできる限り長く付きあってゆきたい。いまだにロータスヨーロッパやエランを大事そうに乗っている素敵な人たちがいるように、20年後も私はこのエクシージに乗って伊豆・箱根を走り回っていたい。(完)