A GARAGE FOR LOTUS

愛車LotusExigeと過ごす伊豆山奥の隠居生活

STORY(2) - そしてEXiGEとの出会い

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オーダーしてからエクシージが手元に届くまでにはさらに1年近くかかった。全世界で620台程しか作られなかった車である。初めてそのシートに座ったとき、果たして私の手に負えるだろうか心配になった。後で知ったが、この車のオーナーのほとんどはサーキットでレースを楽しむ輩で、ロードバージョンと言うのは、決して「街乗り」用という意味ではなく、「サーキットまで合法的に自走できる車」という意味に理解すべきだったらしい。

“LOTUS = LOts of Trouble, Usually Serious”と皮肉られる車。エリーゼのオーナーとしてトラブルには慣れたつもりだったが、エクシージは別格だった。納車の際の注意。「ガスは満タンにしないでください。」「何で?」「漏れるので。」「?!.....」そのディーラーが倒産し国内正規ディーラー不在の状態の中、英国ロータス社が発表したリコール。場合によっては火災が発生するとか、ブレーキが効かなくなると知らされても、修理に持ち込むディーラーがないという不安とプレッシャー。道路のギャップを越えるときのボディーのたわみでヒビ割れるフロントウィンドウ、室内に滴り落ちる雨水、2週間も乗らないとアガッテいるバッテリー、とんでもない数値に設定されていたホイールアライメントなど、きりが無い。修理できるものならまだいい。ミッドシップの宿命、背後のエンジンからの熱はどうしようもない。夏に渋滞にでもはまろうものなら、冗談ではなく、命にかかわる。

恥を偲んで正直に言おう。エクシージに替えた最大の理由はエリーゼには無かったエアコンが装着可能だったからなのだ。軽量化というコンセプトと相反するのはわかっている。エアコンを欲しがるような軟弱者はこの車に乗る資格が無い。それもわかっている。だが、それでもエアコンが欲しくなる程、エリーゼの夏の暑さは殺人的だった。屋根があり窓を閉めきった涼しい空間で、快適にこの車がドライブできるという誘惑に勝てなかったのだ。だが、ここでもこのトラブルメーカーは面目を施してくれた。果たしてエクシージのエアコンのスイッチを入れても吹き出るのはただの「温風」だったのだ。まさかクーラー不要の涼しい国で作ったエアコンだからというオチではあるまい、と走り続けようとするが、エンジンはますますヒートアップし、アイドリングもおぼつかず、ストール寸前。とても走れたものではない。結局最後には、エアコンを「送風」にして窓を開ける方がよっぽど涼しいことに気が付くが、もう遅い、騙された。無用の長物というやつである。屋根がある分、熱が室内にこもり、エリーゼの時より始末に悪い。ペットボトルを持ち込んでいつでも水が補給できるようにしていないと脱水症か熱中症か、本当に危険な状態になる。やはりサーキット以外は走らない方がいい車であった。(つづく...)